2025年05月27日

【続報】2025年度大会・総会6月1日(日)@東京造形大学

形の文化会2025年度大会・総会を下記の通り開催します。
形の文化会会員は事前申込不要、非会員は東京造形大学会場でのみ、参加可能です。
下記フォーム(形の文化会事務局宛)より5月31日(土)までにお申し込みください。
https://forms.gle/D4STDUTap4Tqzy1X8

形の文化会は「かたち」をめぐる学際学会です。
皆様のご関心、ご参加を歓迎いたします。

ーーーーー 記 ーーーーー
形の文化会2025年度大会・総会
日時:2025年6月1日(日)13:00-17:00
会場:東京造形大学2-102教室(※1)+会場からの映像中継(※2)
参加費:形の文化会会員は無料、非会員は当日会場にて現金1,000円を受け付けます。ただし、当日会場にて本人学生証明書を提示する学生・生徒は無料です。

※1東京都八王子市宇津貫町1556( https://www.zokei.ac.jp/university/access/
※2)通常のオンライン会議形式ではなく、会場風景の映像中継です。スクリーンに表示された内容が見づらい、読みづらい、また音声が遠くて聞き取りにくい点は予めご容赦ください。
オンラインURLは会員メーリングリストにてお知らせします。

<タイムテーブル>
13:00-13:30 開会挨拶・総会

13:40-14:10 会員発表1
重信 あゆみ(大阪大学)
「ホルスを抱くイシス図像の東アジアへの伝播とその受容(仮)」
(概要)
本発表では、中国の女神・女媧の図像形成において、古代エジプトの「ホルスを抱くイシス」図像の影響の可能性を考察する。
母子像は紀元前から広く祈りの象徴として用いられ、エジプトでは新王国時代に定型化され、後にローマ帝国・キリスト教世界へと受け継がれた。中村圭志は、イシス像が聖母子像に置き換わり、中国では道教系の観音像に展開したと指摘する。しかし、中国では後漢期にも子を抱く女神像が存在し、三段式神像鏡に描かれた女神像は、李松によれば女媧の可能性がある。鏡に刻まれた「九子」という銘文は、屈原『天問』に登場する、夫を持たぬ女神・女岐と関連し、処女懐胎のマリアと類似する。このように、中国の女媧像にも西方の母子像図像が影響を及ぼした可能性が考えられる。

14:10-14:40 会員発表2
原田千夏子(中部大学民族資料博物館)
「雪舟の造形表現再考──空間の奥行きと時代性」
(概要)
室町時代の水墨画家、雪舟(1420-1506頃)は、絵画や庭園ほか諸作品を制作した。雪舟の造形表現の特徴について、制作関連の図面資料を用いて確認すると、極小空間においても内的に空間に奥行きを感じさせる効果を生み出す工夫が明らかとなる。では、この奥行きに対する強い空間意識はどこから来ているのか。
 雪舟の生きた室町時代は、仏教の浄土思想を土台の一つとして、さまざまな思想が共存しており、その状況を受け入れ、一つに融合するところに新しい世界観を作りだそうとしていた。この時代性のなかで展開していた同時代の演劇や絵図の空間表現とともに、雪舟の位置づけを多様な表現の一つの要素として見直すとき、その存在感がいっそう強まってみえてくる。とりわけ空間に対する造形表現という視点に特化すると、雪舟以後の茶室建築のなかにも類似した空間表現への趣向を見出すことができ、この内的に奥行きを作る空間を求める意識が2次元、3次元の表現に明確化する室町期を契機に、日本的な表現様式が確立していくと解釈できよう。発表者の今回の議論は現在の研究史では試論のひとつにすぎないけれども、まず図面資料の分析にもとづく大切な基本問題を論じることとしたい。

14:40-15:10 会員発表3
王智恒(東京造形大学大学院)
「3DCG布地シミュレーションにおける感覚閾値の定量化――オンライン衣料ECの各特性の質感最適提示」
(概要)
オンライン衣料ECでは布地の物理特性が画面上で伝わりにくい。本研究は3DCGシミュレーションで生成した形状変化とユーザー評価を結び付け,感覚閾値(JND) を定量化する。綿・ポリエステル・シルク各布に対し厚み 0.19–0.7mm,光沢 ±5–12%,剛性 ±20–30%,透過率±5–20%,ドレープ係数 40.5–72.2%を段階操作した映像を提示し,30名の一般消費者が5段階で差異感を判定。プロビット解析の結果,光沢・透明度は±5–10%の微小変化で知覚される一方,柔軟性とドレープ性は15%以上の変化が必要であることを確認した。得られた閾値をアルゴリズムに組み込み,閾値以下では形状変化を抑え,超過時のみ質感を強調する表示手法を提案する。本成果は、視覚上に現れる形状・質感変化とユーザー感覚の対応関係を定量化したものであり、UIスライダ刻み幅やレンダリング精度設定の根拠となる。今後は布種拡張とリアルタイム適用を検討する。

15:10-15:40 会員発表3
新井翼(VFX/CGアーティスト)
「現生生物の観察から古生物復元への応用について」
(概要)
筆者はCGモデリングによる古生物の科学的な容態描写を目指し、現生動物の観察から筋肉のつき方や皮膚のたるみ、鱗や羽毛の質感などをを加味して、骨格だけでは表現しきれない「かたち」の奥行きを模索している。19世紀に恐竜や古生物の存在が認められて以来、その容態は断片的な化石と現生生物の解剖学的知見と容姿からの類推で描かれ、一般庶民に浸透してきた歴史がある。現生生物の形は、誰も視認したことのない古生物の実在を確信させる手がかりとなる一方、その後の物証の増加と計算科学の発達により、現代ではそれらの容態、特に外観や動態は大きく変容した。こうした古生物の姿態・動態シミュレーションのプロセスを、具体例を交えて報告する。

(5分休憩)
15:45-17:00 招待講演・質疑応答
<招待講演>
演 題:「恐竜の形の魅力」
講演者:真鍋 真(国立科学博物館・名誉研究員、群馬県立自然史博物館・特別館長)
概 要:始祖鳥が爬虫類と鳥類の中間の化石と位置付けられたのは1868年の「種の起源」の改訂版でした。その後、爬虫類と鳥類の近縁性は一度は否定されましたが、1970年代に手首などの類似性から鳥類の恐竜起源説が復活しました。同説が広く知られるようになったのには小説「ジュラシックパーク」、さらにはその映画化が大きく貢献しました。恐竜と鳥類の近縁性がさらに発信力をもつようになったのは、1996年に始まった「羽毛恐竜」の発見でした。あれから約30年、恐竜学の現在地を確認し、近未来を俯瞰してみましょう。
真鍋顔写真c️与古田松市.jpg
真鍋真氏/撮影:与古田松市
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posted by 形の文化会 at 10:44| 東京 ☁ | TrackBack(0) | 2025年度の活動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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